避妊の概要と方法

女性ホルモンと避妊の関係性

女性の身体は排卵後、黄体ホルモン(プロゲステロン)が作り出されるようになります。
このホルモンは排卵後や妊娠中に女性の体内で増えると言われています。
ですので、ピルを服用すると成分の1つとされる黄体ホルモンを摂取することになるので、妊娠している時と同じ状態が作られ排卵を抑えることが出来るようになります。
これが1つ目のピルの原理です。

またピルにはもう1つ、卵胞ホルモン(エストロゲン)が含まれています。
もちろん黄体ホルモンのみでも避妊の効果はありますが、それでは効果が不十分と考えられています。
卵胞ホルモンと一緒に服用することで避妊効果を更に高めることができます。

2つのホルモンが含有されることで、女性がより妊娠し難い身体へと変化していきます。

海外では黄体ホルモンのみを服用する「ミニピル」と呼ばれるものもありますが、国内では不妊症の治療などのために使用され、避妊薬としては使用されていないようです。

ピルとは

避妊薬である通称ピル「pill」は、和訳すると"錠剤"という意味になりますが「the」を先頭に付けることで"避妊薬"という意味になります。

英語では略して「OC」と呼ばれることもあり「Oral Contraceptive」の頭文字をとったものになっています。
しかし正確に言うと、OCは低用量のピルを指していて、中量/高量のピルのことではありません。

ここのページでは、日本では馴染みのあるピルという言葉を用いてその種類や効果について解説していきます。

ピルの種類と特徴

用量の違いによる分類

卵胞ホルモン(エストロゲン)と一緒に服用することで避妊の効果を強めることは冒頭に説明したとおりです。

女性は知っている人が多いと思いますが、ピルには低用量/中用量/高用量の3種類があります(厳密に言えば、超低用量ピルというのもあります)
この用量の違いには、卵胞ホルモンが大きく関係しています。

ピルの副作用の多くが卵胞ホルモンによるもので、ピルが誕生してから今に至るまで「いかに副作用を減らすか?」がピルの歴史といっても良いくらいです。

もっとも古いものが"高用量ピル"になり、1960年に誕生したと言われています。

卵胞ホルモンを50μg(マイクログラム)にまで減らすことに大きな問題はありませんでした。
それで誕生したのが"中用量ピル"です。

そこから更に研究を続け、20~40μgにまで用量を減らしたのが"低用量ピル"になります。
避妊の効果を失わないギリギリまで用量を減らしたものと言われ、中・高用量に比べて副作用はかなり抑えられます。
日本で認可されている低用量ピルの卵胞ホルモン用量は、30~40μgとなっています。

これより少ない30μg以下が"超低用量ピル"と呼ばれるものになります。

黄体ホルモンの種類と世代

低用量ピルには世代があるということをご存知でしょうか?
ピルに使用されている黄体ホルモンの種類によって、第1世代/第2世代/第3世代に分類されています。

・第1世代
ノルエチステロン

・第2世代
レボノルゲストレル

・第3世代
デソゲストレルやゲストデン

避妊効果は同じですが、少し特徴が変わってきます。
はじめて開発されたピルは、黄体ホルモンの作用が弱いと言われ、卵胞ホルモンの力を借りていました。
しかし、卵胞ホルモンの量が多いと「血栓症」や「乳ガン」「子宮頸ガン」のリスクが高まってしまうと言われ、他にも肝臓に障害が出るなどの報告もあったことからWHO(世界保健機構)から卵胞ホルモンの用量を50μg未満にするようにと勧告を受けてしまいました。
そこで第1世代からそれぞれ工夫をこらしホルモン量に適合したピルが開発されたのです。

第1世代の特徴
卵胞ホルモンを50μg未満にして、黄体ホルモンの分量を増やしたのが第1世代の低用量ピルです。
第1世代のピルは日本での処方率が高く、なかでもマーベロンが有名です。

第2世代の特徴
黄体ホルモンは増やさずに、減らす方法で卵胞ホルモンを少なくするという新しい方法で開発されたのが第2世代の低用量ピルです。
そこに使用された黄体ホルモンが"レボノルゲストレル"でした。
少ない卵胞ホルモンでも避妊効果があるので、当時は画期的なピルとされていました。
しかし、これには1つ弱点がありました。
それが「男性化症状のアンドロゲン作用」です。
これはニキビや脂漏、体毛が濃くなるなどの問題で、女性にとっては良くない効果が現れるようになりました。
第2世代のピルは日本では利用率が低いのも特徴です。

第3世代の特徴
そこでこういった問題を解決するために考えられたのが、服用する日によって黄体ホルモン用量が変化する「1相性」「2相性」「3相性」であり、段階ごとに黄体ホルモンを変化させることで、男性化症状を抑えることが出来るようになりました。
それが1980年代に入ってからの事になり、これが第3世代の低用量ピルになります。
第1、第2世代の弱点を克服して完成したのが第3世代ということになります。
第3世代のピルとしてはトリキュラーが人気です。

続いて、ホルモン用量の変化に関する相性についてライフ博士が説明します。

相性別ピルの特徴

スバッと解説!ライフ博士の経口避妊ピル講座

ピルは種類も多いし、どの相性にすれば良いかわからないという方もいらっしゃるかと思います。
結論から言えば、避妊効果はどれも同じです。
下記の解説をお読みいただき、ピル選びの参考にしていただければと思います。

1相性ピル

特徴は、ピルの服用期間である21日=21錠に含まれている成分がどれも同じことです。
国内で処方されている「マーベロン」や「プラノバール」がそれに当たります。
用量に変化がないので、飲み間違いなどを起こす心配がありません。
また人によっては、1相性がもっとも避妊効果が高いと考える人もいます。
国内ではピルを飲み慣れた人に好まれる傾向があるようです。

2相性ピル

ホルモン用量が2段階で変化していきます。
国内処方では「エリオット2」がそれに当たります。
前半で服用する用量の2倍が後半の用量になり、身体に合わせた自然なホルモン変化を望むのであれば、2相性がもっとも良いと言われています。

3相性ピル

もうお分かりだと思いますが、用量は3段階で変化します。
「トリキュラー」がそれに当たり、卵胞ホルモンの用量は一定ですが、服用日数で次第に黄体ホルモンが増加していきます。
「女性の自然なホルモンサイクルに近い変化がある」と宣伝されていますが、服用しない時と同じホルモンサイクルになってしまっては、避妊効果を得ることは出来ません。
ですので徐々に用量が変化していくと考えた方が自然かも知れません。

如何でしたか?
それぞれの特徴と違いがおわかりいただけたかと思います。
どのタイプがご自身に合うか、飲み方も含め参考にしてみてください。
人によっては1相性が1番強い効果を持つと考えられている節もありますが、結論から言えば、避妊効果はどれも同じです。

低用量ピルのうれしい副効用

生理関連

ホルモンを補充することで、女性にとっては嬉しい副効用も付いてきます。

・生理痛を軽減
・生理時の出血量を減らす(貧血の改善)
・生理不順を改善
・予定に合わせて生理日を変更できる

美容面の改善

低用量ピルは「ライフデザインドラッグ」とも呼ばれているので、避妊以外にも女性の生活を向上させてくれる効果があります。

・ニキビ
・脂漏
・多毛症

妊娠を回避する最後の手段

アフターピルの効果と副作用

ここまで低用量/中用量/高用量のピルについて解説してきましたが、他にも同じ避妊効果をもった緊急避妊薬があります。
それが"アフターピル"と呼ばれる緊急避妊薬になります。

アフターピルは以下の場合に使用されます。

・コンドームが破損した
・低用量ピルの飲み忘れや飲み間違い
・強姦やレイプの被害に遭った

避妊行為の失敗あるいは、望まぬSEXを強いられた際に使用するピルになっています。
効果としては、排卵を抑制してしまうことで受精卵となる機会を失わせ、妊娠を防ぐと言われています。

副作用が強く出ることから、常用する低用量ピルとは異なり、万一の際に使用するピルになっています。
多い副作用の症状としては、不正出血や吐き気、頭痛などが起こると言われています。
一過性のものですが、服用した女性の殆どに症状が起こるので、身体への負担は大きいと考えられています。

またSEX後、72時間が服用のタイムリミットとなり、これを過ぎてから服用しても避妊効果が得られないと言われています。
日本ではアフターピルの「ノルレボ」が一般的に普及しており、WHO(世界保健機構)からも「エッセンシャルドラッグ」とされています。
また、ノルレボのジェネリックであるアイピルであれば購入の際の価格を抑えることができます。


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