低用量ピル避妊薬ピル

低用量ピルとトラネキサム酸は併用できる?|血栓症のリスクや注意点について解説

低用量ピル

低用量ピルとトラネキサム酸の併用について

シミや肝斑の治療を考えていたり、美容に関心のある女性の多くは、低用量ピルとトラネキサム酸の併用が可能かどうか気になったことがあると思います。

結論から言うと、低用量ピルとトラネキサム酸の併用は、基本的には避けた方が良いでしょう。

ここでは低用量ピルとトラネキサム酸の併用を避けた方が良い理由について、詳しく説明していきます。

低用量ピルとトラネキサム酸の併用について

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低用量ピルとトラネキサム酸の併用は避けた方が良い

低用量ピルとは2種類のホルモンを合わせて作られた医薬品で、避妊や生理痛、月経前症候群(PMS)などに効果があります。

一方でトラネキサム酸は、主にシミや肝斑の治療に使われるアミノ酸の一種で、喉の炎症を抑える医薬品として市販薬にも配合されています。
また、プラスミンという血液を溶かす物質の働きを抑制する止血作用があるため、止血剤として用いられることも。

低用量ピル服用中のトラネキサム酸併用について、風邪などによる一時的な服用を目的とした場合は併用可能ですが、長期的な服用が必要となる美容目的では併用不可とするクリニックが多いようです。

その理由は、この二つを併用することで血栓症を引き起こすリスクが高まる恐れがあるという点にあります。

血栓症のリスク

低用量ピルの成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)には血液凝固作用があるため、副作用として血栓症の発症リスクがあります。

そして、トラネキサム酸には止血作用があるため、ピルの服用により血栓ができた場合、その血栓が自然に溶けるのを遅くしてしまう作用があります。
そのため、リスク回避として併用禁止を推奨している医師や医療機関が多数あるということです。

しかし、血栓症が発症するリスクは通常年間1万人あたり1~5人なのが、低用量ピルを服用すると1万人あたり3~9人に増える程度で、それほど大きな変化はありません。

副作用の発現頻度は、0.1%未満だと「まれに副作用がある」に分類されます。
低用量ピルの服用による血栓症の発症リスクは0.1%よりも低いため、過度に心配する必要はありません。

副作用の発現頻度は、0.1%未満だと「まれに副作用がある」に分類されます。
低用量ピルの服用による血栓症の発症リスクは0.1%よりも低いため、過度に心配する必要はありません。

血栓症について

血栓症とは、血液中にできた塊が血管をふさぐことでおこる疾患です。
この血液中にできた塊を血栓といい、血栓ができる場所によってさまざま病気を引き起こします。

血栓によって引き起こされる疾患
  • 脳の血管が詰まる・・・脳梗塞
  • 心臓の血管が詰まる・・・心筋梗塞
  • 足の血管が詰まる・・・下肢急性動脈血栓症
  • 腸の血管が詰まる・・・上腸間膜動脈血栓症
  • 肺の血管が詰まる・・・肺血栓塞栓症
  • ふくらはぎの血管が詰まる・・・深部静脈血栓症

低用量ピルに含まれている卵胞ホルモンには、心血管保護作用があるため心臓につながる血管や筋肉を保護しますが、同時に血液を固まりやすくする作用もあります。
そのため低用量ピルを服用すると、血栓が形成されるリスクが高まるとされています。

血栓症の初期症状や、発症リスクが高い人についての特徴を解説していきます。

血栓症の初期症状

血栓症には、以下のような初期症状があります。

血栓症の初期症状
  • 足のむくみ、痛み、しびれ、ふくらはぎがだるく感じる(主に片脚にあらわれるが、両足の場合も)
  • 突然の息切れ、激しい腹痛や胸痛
  • 目がチカチカするなど前兆のある頭痛、めまい、激しい頭痛
  • 舌がもつれる、喋りにくい
  • 視野が狭くなる、目がかすむ

血栓症は血液の流れを止めてしまい、細胞の壊死により機能障害が起こるため、早期発見、早期治療が大切です。
症状が現れた場合はすぐに服用をやめ、医師の診察を受けましょう。

血栓症が起きるリスクが高い人の特徴

低用量ピルとトラネキサム酸の併用に関して、以下に当てはまる人は注意が必要です。

併用に関して注意が必要な人
  • 過去に血栓症になったことがある
  • 家族に血栓症になったことがある人がいる
  • 高血圧である
  • 高脂血症である
  • 先天的に血栓症になりやすい先天性血栓性素因がある
  • 血液を固める医薬品を使用している
  • 習慣的に喫煙している
  • ケガや手術後である
  • 45歳以上である
  • BMI数値が30以上で肥満に該当する

このような条件にあてはまる人は血栓症の発症リスクが高まるため、ピルとトラネキサム酸の併用について慎重に考える必要があります。

血栓症のリスクの高い人は、ピルの処方自体してもらえない可能性もあります。

低用量ピルによって血栓症が起こる確率

低用量ピルは、服用することで血栓が起こりやすくなるとされていますが、低用量経口避妊薬のガイドラインでは以下が報告されています。

属性発症者数
ピルを服用していない女性1~5人
ピルを服用している女性3~9人
妊娠中~産後12週間40~65人
女性10,000人あたりの年間血栓発症者数

ピルを服用している女性が血栓を発症する確率より、妊娠中~産後の方が約8倍も発症リスクが高いとされています。
また、低用量ピルを服用中に血栓症で亡くなる人の数は10万人あたり1人と報告されていますが、これは日本人が1年間のうち交通事故で死亡する数10万人あたり4人よりも低い値です。

万が一低用量ピルを服用中に血栓症が発症したとしても、そのほとんどは早期発見、早期治療により対応できるため、安全に服用できます。

血栓症が起きやすいタイミング

低用量ピルを服用したからといって、すぐに血栓症になるわけではありません。
血栓症には起きやすいタイミングがあり、それが服用を開始してから3ヶ月以上~6ヶ月未満の時期です。
この時期はとくに体調の変化に気を付ける必要があります。

服用を開始してから6ヶ月以上経過すれば、血栓症が起きるリスクは下がります。
しかし服用している間は血栓症が起きる可能性がゼロではないため、血液検査など定期的な検診が推奨されています。

低用量ピルの服用を一度中断し、しばらくしてから再度服用する場合も、服用再開後3ヶ月~6ヶ月はピルを飲み始めた時と同じように血栓症のリスクが高まるため、注意が必要です。

低用量ピルとの併用や飲み合わせに注意が必要な薬

低用量ピルには、トラネキサム酸以外にも併用できない医薬品や成分があるため注意が必要です。
次の項目では、併用や飲み合わせに注意が必要な医薬品や成分をそれぞれ詳しく解説します。

低用量ピルとの併用や飲み合わせに注意が必要なもの

併用や飲み合わせに注意が必要な薬

併用や飲み合わせに注意が必要な医薬品は以下になります。

併用禁止の医薬品

・C型肝炎の治療薬
一緒に服用すると肝機能が悪化する事例が多数報告されているため、併用禁止です。

併用注意の医薬品

・バルビツール酸系、ヒダントイン系の抗てんかん薬
・ペニシリン、テトラサイクリンなどの抗生物質 など

併用するとピルの効果を弱める可能性があります。
また、ピルの効果が弱まってしまうと避妊効果へも影響が出るため要注意です。

・アセトアミノフェンが主成分の解熱鎮痛薬
・フルコナゾール、ボリコナゾールなどの抗真菌薬 など

ピルの効果を強めてしまうため、副作用が発生しやすくなる可能性があります。

・モルヒネ
・血糖降下薬 など

ピルとの併用により、薬の効果が弱まる可能性があります。

・免疫抑制剤
・副腎皮質ステロイド など

ピルとの併用により、薬の効果が強まる可能性があります。

併用や飲み合わせに注意が必要な成分

併用や飲み合わせに注意が必要な成分は以下になります。

併用や飲み合わせに注意が必要な成分

・セントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)
代謝に関する酵素を誘導する働きがあるため、低用量ピルの代謝を促進させ効果を半減させる可能性があります。

・アルコール
アルコールも低用量ピルも肝臓で代謝されます。
そのため同時に摂取した場合、肝臓はアルコールの代謝を重点的におこなうため、低用量ピルの代謝が遅れて効果が強く出過ぎてしまう可能性があります。

低用量ピルを服用してある程度時間をおいてからのアルコール摂取なら問題ないため、水の代わりにアルコールで低用量ピルの服用はやめてください。

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血栓症の予防方法

血栓症はエコノミー症候群のように、以下の3つの要素が重なると発症リスクが急上昇します。

発症リスクを高める3つの要素
  • 固まりやすい状態の血液
  • 血液の流れが滞る
  • 血管の内側の細胞が破損する

低用量ピルを服用している人は、とくにこの3つの要素を発生させないよう、工夫する必要があります。
次の項目では、血栓症を予防するための主な方法を紹介します。

着圧ソックスの使用

着圧ソックスとは、締め付け感があるソックスのことです。
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、筋肉の収縮により心臓へ向かって下半身の血液を押し上げる役割を担っています。

着圧ソックスや弾圧ストッキングなどで意図的にふくらはぎを締め付けることで、足の静脈の血液が停滞するのを防ぎ、心臓に戻りやすくします。
着圧ソックスや弾圧ストッキングは市販されていますが、医療目的の製品とは圧迫度が異なります。

しっかりとした圧迫度が欲しい方は、医師に相談し、医療用を購入してください。

こまめな水分補給

低用量ピルには、血液が固まりやすくなるエストロゲンが含まれているため、服用中はこまめな水分補給が大切です。
意識的に1日1.2~2リットルの水分を摂取するよう心掛けましょう。

水分補給するタイミング
  • 寝起き
  • 運動した後
  • 入浴の前後
  • 就寝前
  • 汗をかいたとき

とくに寝ている間は水分不足に陥りやすいため、朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲むことをおすすめします。
アルコールは利尿作用があり、飲んだ量以上に尿として水分が体外に出て行ってしまいうため、水分補給には適していません。

入浴後の水分補給にビールを1杯飲みたい人もいると思いますが、アルコールではなく水を飲んでください。

適度な運動

長時間の移動やデスクワークなど、同じ姿勢を長い時間続けると血流が滞り、血栓症が引き起こされる可能性があります。
定期的にストレッチや軽い運動をおこなうなど、体やふくらはぎの筋肉を動かし、足の静脈の血液が心臓に戻りやすくする手助けをしましょう。

立ったり座ったりができない場合、2~3時間に1回は足首の曲げ伸ばしをおこなったり、ふくらはぎのマッサージをおこなったりするだけでも血栓防止効果があります。

低用量ピルとトラネキサム酸の併用についてよくある質問

ピルとトラネキサム酸は併用して大丈夫ですか?

トラネキサム酸は血を固まりやすくする作用があります。


美容のためにトラネキサム酸を服用する場合は長期にわたることが多く、ピルとの併用で血栓のリスクが高くなる可能性があるため、おすすめできません。

トラネキサム酸は血栓のリスクがありますか?

トラネキサム酸には血を固まりやすくする作用があるため、血栓ができる場合があります。


過去に血栓症の既往歴がある、心疾患や動脈硬化のリスクがある人は注意が必要です。

風邪の際、ピルとトラネキサム酸を併用できますか?

トラネキサム酸は市販の風邪薬にも含まれています。


ピルを服用中に、風邪などの治療目的で一時的に服用する程度なら特に問題ないため、併用可能です。

トラネキサム酸とピルは血栓症に関係しますか?


特に、血栓症の既往歴がある人は併用を控えた方が良いでしょう。


気になる方は併用の際、医師に相談してみてください。

トラネキサム酸は血液をドロドロにしますか?

トラネキサム酸が、健康な人の血液を固まらせることはありません。


しかしトラネキサム酸には血液を固まりやすくする作用があるため、過去に血栓症の既往歴がある人や、血栓ができやすい状態の人は服用を控えた方がよいでしょう。

低用量ピルで血栓症になりやすくなる年齢は?

35歳以上から注意が必要です。

30~34歳の人と比べると、血栓症になるリスクが35歳以上の人は1.18倍、45歳以上だと2倍になります。

低用量ピルによる血栓症はどんな痛みがありますか?

血栓症は血の塊で体内の血流を防ぐため、以下のような痛みを感じた場合は服用を止め、すぐに医師の診察を受けてください。


・息苦しさ、激しい胸痛、胸が押しつぶされるような痛み

・めまい、激しい頭痛

・ふくらはぎのうずくような痛み

低用量ピルで血栓症になった後、服用を再開してもいいですか?

低用量ピルは一旦中止した後、3ヶ月以内に再開すると血栓のリスクを下げることができます。

しかし自己判断で安易に中止、再開を繰り返すと血栓のリスクが高まるため、服用再開は必ず医師に相談してください。

低用量ピル服用中の血液検査の頻度はどのくらいですか?

約6ヶ月に1回の頻度が推奨されています。

血液検査以外に、服用を開始して1ヶ月後と3ヶ月後には副作用の有無や、効果が出ているか、気になることはないかなどをチェックする問診があります。

参考サイト

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