低用量ピル避妊薬ピル

低用量ピルによる血栓症のリスク|初期症状や対処方法についても解説

低用量ピル

血栓症とは

血栓症とは、血液中にできた塊が血管をふさぐことでおこる疾患です。
この血液中にできた塊を血栓といい、血栓ができる場所によってさまざま病気を引き起こします。

血栓によって引き起こされる疾患
  • 脳の血管が詰まる・・・脳梗塞
  • 心臓の血管が詰まる・・・心筋梗塞
  • 足の血管が詰まる・・・下肢急性動脈血栓症
  • 腸の血管が詰まる・・・上腸間膜動脈血栓症
  • 肺の血管が詰まる・・・肺血栓塞栓症
  • ふくらはぎの血管が詰まる・・・深部静脈血栓症

飛行機の中など長時間座りっぱなしだと、ふくらはぎに深部静脈血栓症ができます。
その血栓が大きくなりちぎれた一部が肺に流れて肺動脈を防ぎ、肺血栓塞栓症を引き起こすことがありますが、これを別名エコノミークラス症候群とも呼びます。

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低用量ピルの副作用とは?|主な症状と対処方法について解説

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血栓症ガイドブック|血栓症とはこんな病気です

低用量ピルによる血栓症のリスク

低用量ピルとは、黄体ホルモン(プロゲステロン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)の2種類の女性ホルモンが配合された経口避妊薬(OC)です。
低用量ピルには、以下の効果が期待できます。

ピルによって期待できる効果
  • 避妊効果
  • 生理痛の軽減
  • PMS(月経前症候群)症状の改善
  • ニキビや肌荒れの改善
  • 生理周期の安定

低用量ピルに含まれている卵胞ホルモンのエストロゲンには、心血管保護作用があるため心臓につながる血管や筋肉を保護しますが、同時に血液を固まりやすくする作用もあります。
そのため低用量ピルを服用すると、血栓が形成されるリスクが高まるとされています。

これらのリスクや初期症状について解説していきます。

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低用量ピルの効果について|効き始めるのはいつ?効果のメカニズムについて解説

低用量ピルによって血栓症が起こる確率

低用量ピルは、服用することで血栓が起こりやすくなるとされていますが、低用量経口避妊薬のガイドラインでは以下が報告されています。

属性発症者数
ピルを服用していない女性1~5人
ピルを服用している女性3~9人
妊娠中~産後12週間40~65人
女性10,000人あたりの年間血栓発症者数

ピルを服用している女性が血栓を発症する確率より、妊娠中~産後の方が約8倍も発症リスクが高いとされています。
また、低用量ピルを服用中に血栓症で亡くなる人の数は10万人あたり1人と報告されていますが、これは日本人が1年間のうち交通事故で死亡する数10万人あたり4人よりも低い値です。

万が一低用量ピルを服用中に血栓症が発症したとしても、そのほとんどは早期発見、早期治療により対応できるため、安全に服用できます。

参考ページ
低用量経口避妊薬|CQ40 VTEリスクの説明は?

血栓症が起きやすいタイミング

低用量ピルを服用したからといって、すぐに血栓症になるわけではありません。
血栓症には起きやすいタイミングがあり、それが服用を開始してから3ヶ月以上~6ヶ月未満の時期です。
この時期はとくに体調の変化に気を付ける必要があります。

服用を開始してから6ヶ月以上経過すれば、血栓症が起きるリスクは下がります。
しかし服用している間は血栓症が起きる可能性がゼロではないため、血液検査など定期的な検診が推奨されています。

低用量ピルの服用を一度中断し、しばらくしてから再度服用する場合も、服用再開後3ヶ月~6ヶ月はピルを飲み始めた時と同じように血栓症のリスクが高まるため、注意が必要です。

血栓症の初期症状

血栓症には、以下の初期症状があります。

血栓症の初期症状
  • 足のむくみ、痛み、しびれ、ふくらはぎがだるく感じる(主に片脚にあらわれるが、両足の場合も)
  • 突然の息切れ、激しい腹痛や胸痛
  • 目がチカチカするなど前兆のある頭痛、めまい、激しい頭痛
  • 舌がもつれる、喋りにくい
  • 視野が狭くなる、目がかすむ

血栓症は血液の流れを止めてしまい、細胞の壊死により機能障害が起こるため、早期発見、早期治療が大切です。
症状が現れた場合はすぐに服用をやめ、医師の診察を受けましょう。

血栓症が起きるリスクが高い人の特徴

低用量ピルを服用することで、血栓症のリスクが高まる可能性のある人がいます。
閉経している人や重度の高血圧の人は、医師に処方を希望しても出してもらえない場合があるため、注意が必要です。

次の項目では、血栓症のリスクが高い人の特徴について詳しく説明します。

低用量ピルを服用できない人

以下の条件に当てはまる人は、低用量ピルの服用ができません。

低用量ピルの服用ができない人
  • 目がチカチカするなど、前兆をともなう片頭痛がある人
  • 35歳以上で、1日15本以上タバコを吸う人
  • 50歳以上、またはすでに閉経している人
  • 重度の高血圧の人
  • 血栓症に関係する病気にかかったことがある人
  • 重度の肝障害の人
  • 乳がんまたは子宮がんの人

1日15本以上の喫煙や生活習慣病などが、心筋梗塞や脳卒中のリスク増加につながる要素となるため、これらに該当する人への低用量ピルの投与は禁忌とされています。

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低用量ピルの喫煙のリスクについて|喫煙者が低用量ピルを服用する際の注意点

低用量ピルの服用に注意が必要な人

以下に当てはまる人は、低用量ピルの服用に関して注意が必要です。

低用量ピルの服用に注意が必要な人
  • 40歳以上
  • 喫煙者
  • 軽度の高血圧(妊娠中のみの高血圧も含む)
  • 肥満の人(BMI30以上)
  • 前兆のない片頭痛がある人
  • 脂質異常症や糖尿病の人
  • 血栓症に関する病気や、乳がんにかかった家族がいる
  • 授乳中の人

これらに該当する場合も、血栓症のリスクを高める要因となるため、服用の際は必ず医師に相談してください。

血栓症の予防方法

血栓症はエコノミー症候群のように、以下の3つの要素が重なると発症リスクが急上昇します。

発症リスクを高める3つの要素
  • 固まりやすい状態の血液
  • 血液の流れが滞る
  • 血管の内側の細胞が破損する

低用量ピルを服用している人は、とくにこの3つの要素を発生させないよう、工夫する必要があります。
次の項目では、血栓症を予防するための主な方法を紹介します。

参考ページ
千葉県医師会|治療と予防法

着圧ソックスの使用

着圧ソックスとは、締め付け感があるソックスのことです。
ふくらはぎは第二の心臓とも呼ばれ、筋肉の収縮により心臓へ向かって下半身の血液を押し上げる役割を担っています。

着圧ソックスや弾圧ストッキングなどで意図的にふくらはぎを締め付けることで、足の静脈の血液が停滞するのを防ぎ、心臓に戻りやすくします。
着圧ソックスや弾圧ストッキングは市販されていますが、医療目的の製品とは圧迫度が異なります。

しっかりとした圧迫度が欲しい方は、医師に相談し、医療用を購入してください。

こまめな水分補給

低用量ピルには、血液が固まりやすくなるエストロゲンが含まれているため、服用中はこまめな水分補給が大切です。
意識的に1日1.2~2リットルの水分を摂取するよう心掛けましょう。

水分補給するタイミング
  • 寝起き
  • 運動した後
  • 入浴の前後
  • 就寝前
  • 汗をかいたとき

とくに寝ている間は水分不足に陥りやすいため、朝起きてすぐにコップ1杯の水を飲むことをおすすめします。
アルコールは利尿作用があり、飲んだ量以上に尿として水分が体外に出て行ってしまいうため、水分補給には適していません。

入浴後の水分補給にビールを1杯飲みたい人もいると思いますが、アルコールではなく水を飲んでください。

適度な運動

長時間の移動やデスクワークなど、同じ姿勢を長い時間続けると血流が滞り、血栓症が引き起こされる可能性があります。
定期的にストレッチや軽い運動をおこなうなど、体やふくらはぎの筋肉を動かし、足の静脈の血液が心臓に戻りやすくする手助けをしましょう。

立ったり座ったりができない場合、2~3時間に1回は足首の曲げ伸ばしをおこなったり、ふくらはぎのマッサージをおこなったりするだけでも血栓防止効果があります。

低用量ピル服用中の血栓症に関するよくある質問

ここでは、低用量ピルを服用中の血栓症に関して、よくある質問をまとめました。

低用量ピルを飲んで血栓症になる確率は?

低用量ピルを飲んで血栓症になる確率は、年間1万人あたり3~9人とされています。


低用量ピルを服用していない場合の確率は年間1万人あたり1~5人のため、比較すると服用したほうが少し高くなります。


しかし妊娠中や産後は年間1万人あたり40~65人と報告されているため、服用による血栓症の確率が高いとはいえません。

低用量ピルで血栓症になりやすくなる年齢は?

35歳以上から注意が必要です。

30~34歳の人と比べると、血栓症になるリスクが35歳以上の人は1.18倍、45歳以上だと2倍になります。

低用量ピルによる血栓症はどんな痛みがありますか?

血栓症は血の塊で体内の血流を防ぐため、以下のような痛みを感じた場合は服用を止め、すぐに医師の診察を受けてください。


・息苦しさ、激しい胸痛、胸が押しつぶされるような痛み

・めまい、激しい頭痛

・ふくらはぎのうずくような痛み

低用量ピルで血栓症になった後、服用を再開してもいいですか?

低用量ピルは一旦中止した後、3ヶ月以内に再開すると血栓のリスクを下げることができます。

しかし自己判断で安易に中止、再開を繰り返すと血栓のリスクが高まるため、服用再開は必ず医師に相談してください。

低用量ピル服用中の血液検査の頻度はどのくらいですか?

約6ヶ月に1回の頻度が推奨されています。

血液検査以外に、服用を開始して1ヶ月後と3ヶ月後には副作用の有無や、効果が出ているか、気になることはないかなどをチェックする問診があります。